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​タクールが好んで噛んでいた香料(スパイス)は?

 

 

 1885年5月23日(土)のコタムリトの中で、タクールは小さな香袋から香料を取り出して噛まれます。(以下、1885年5月23日(土)のコタムリトより)

「飲み物を召し上がってから、小さな香袋から香料(やくみ)をとりだしてお噛みになる。そして袋をしまってくれるようにと校長におっしゃった。」

 その香料は何という香料だったのでしょう。

 それはカバブチニだと思われます。

 コタムリトの中で香料については、この日を含めて4回記述がありますが、そのうち2回は「カバブチニ」という香料の名前が記されています。ではコタムリトの中の香料の記述を見てみましょう。

 

(1882年11月15日(水)コタムリトより)

「一人の信者は、手に香辛料(スパイス)の入った小さい容器を持っていた。その中には、特別にカバブチニが入れてあった。」(訳註 ―― 当時のベンガル人はそういう容器をいつも持ち歩いてタバコ代わりに口に入れていた)

(1883年12月27日(木)コタムリトより)

「彼等は、タクールの幅広い毛糸(ウール)の肩掛けと毛糸の帽子を香料入りの小袋といっしょに持ち込んだ。寒い時候なので、夕方になったらタクールに暖かいものをお着せするつもりである。」

(1885年3月11日(水)コタムリトより)

「タクールは応接間で食後の休息をとっておられた。時々、袋の中から香辛料(マサラ)やカバブチニを出しては食べておられる。」 

 

カバブチニ」とはどんな香料(スパイス)なのでしょう

「カバブチニ」は、日本では「畢澄茄(ひっちょうか)」と呼ばれているコショウ科コショウ属の植物です。学名は Piper cubeba と言い、クベバとも言われます。ジャワ島やスマトラ島で栽培され、香辛料や漢方薬として利用されています。見た目はコショウに似ていますが、柄(へた)が付いているので英名は tailed pepper と言われ、日本で「尾コショウ」とも言われます。また栽培地から「ジャワペッパー/ジャワ長胡椒」と呼ばれることもありますが、正確には「ジャワペッパー/ジャワ長胡椒」は同じコショウ属の「ヒハツモドキ」を指します。

カバブチニ.jpg
カバブチニ

 唐の時代に中国へ伝わる際に、インドでは kabab chini 「カバブ チニ(中国のクベバ)」(kabab=クベバ、chini=中国)と呼ばれるようになりました。

 

「カバブチニ/畢澄茄(ひっちょうか)」は嗜好品として用いられただけでなく、料理用の香辛料(スパイス)としても重宝されています。また東洋、西洋を問わず医薬品としても用いられました。また変わった使用例としてはボンベイ・サファイア・ジン(お酒のジン)の香味付けにも使われています。

 その味は香辛料のオールスパイスによく似た風味です。「S&B食品のオールスパイス(ホール)」と比較した個人的な感想を述べると、オールスパイスより刺激は弱く、レモングラスのような爽やかな風味が含まれているので、口に清涼感が広がります。食後の口のリフレッシュに適していると思います。

 畢澄茄(ひっちょうか/ヒッチョウカ)の名で、日本でもスパイスとしてまれに流通しています。また漢方薬として漢方の薬局でも購入できるようですが、一般的な漢方薬ではないので、取り寄せ、または通販での購入となります。

 風味がオールスパイスに似ているので料理のレシピなどにはカバブチニ(オールスパイス)と記載されることがあります。他にも似た風味の香辛料として、中国では「ムージャンズ(木姜子)(英名:リツィア・クベバ)」、台湾では「マーガオ(馬告)」が代用品として利用されています。

 

 機会があれば、タクール、聖ラーマクリシュナがお好きだった「カバブチニ」を楽しまれてはいかがでしょうか。

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